長尾美紀のブログ

全てを賭けて

大草原を渡る風 パンペロ アニバサリオ

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24、5歳の頃、キャンプへ行った。

どこのキャンプ場だったのか、今では全く思い出せないが、集合場所は大阪だったと思う。

メンバーは、全員で8人。当時まだ交際中だった夫と、夫の友人Kファミリー(夫婦と子ども1人)、夫の友人でテニス仲間の自由人ゆたちゃん(男性)、そして多分ゆたちゃんの友人だったと思われる私より少し年上の女性2人。

午後、まだ明るいうちにキャンプ場に着いた。ビール片手に早い目の晩御飯を皆で作って食べた。

すると、ゆたちゃんが素敵な皮袋を鞄から出してきた。それは茶色いヌメ革の巾着だった。その巾着の中から、丸く背の低いボトルを取り出した。ゆたちゃんはそれを「ラム酒だ」と言った。「パンペロ アニバサリオ」というベネズエラのプレミアム・ラムだった。

それは初めて味わうお酒だった。最初の口当たりは甘く、飲むほどに深みがあり、芳醇でなめらかな味わいだった。私はロックで飲んだ。ツーンと鼻に抜ける香り。アルコール度数は40度だった。

気がつくと、すっかり夜の帳が下り、辺りは真っ暗だった。Kファミリーの子どもはとっくにテントで寝たようだ。大人達はランタンの灯りに集まり、それぞれのペースで飲み、喋り続けた。

ラム酒の美味しさに、私は調子に乗ってしまった。何杯飲んだ頃だろう。急に気分が悪くなった。

私は一人でトイレへ向かった。トイレは遠い。気分が落ち着くまで、しばらくトイレで休んだ。そしてテントに戻ろうとした。

ところが、すんなり自分達のテントまで帰れない。暗くて道がわからない。そこは大きなオートキャンプ場だった。ふと見上げた先には満天の星空があった。何度も道を間違えながらフラフラとした足取りでやっと自分達のテントに戻った。

戻ってみると夫がいなかった。ゆたちゃんによると、なかなか帰ってこない私を心配して探しに行ったらしい。

行き違いだ。

私はどれぐらいトイレで休んでいたかもわからないし、どれぐらい道に迷っていたかもわからなかった。大人しく、夫が戻るのをテントで待った。

しばらくして夫は戻ってきた。なんと女子トイレの中まで探したらしい。トイレから出てきた女性に、個室に私がいないか聞いたとのこと。あぁ、申し訳ない。

残念なのか、ラッキーなのか、夫はほとんどお酒が飲めない。この時もシラフだった。当然ながらラム酒やほかのお酒もほぼ飲んでいないと思われる。

私が調子に乗った飲み方をしていても、未だかつて夫に怒られた記憶がない。夫はいつでも酔っぱらいの私の介抱ができる頼れる男だ。

さて、パンペロ アニバサリオの「パンペロ」とは社名だそう。「大草原を渡る風」という意味らしい。

では「長尾美紀」とは、「大きなキャンプ場で行方不明になる女(夫の介抱付き)」という酔っぱらいの事だ。

そんなラム酒と私の楽しい思い出。